6月4日 今仕込んでおきたい注目の銘柄 |
今日の相場
先週末の米国市場では、トランプ大統領が鉄鋼・アルミニウム関税の引き上げを発表したり、5月のISM製造業景況指数が予想を下回ったりとネガティブ要因が目立つ中でも、半導体株の買い戻しでナスダックはプラス圏を維持。その流れを受けて、東京市場も寄り付きから一瞬だけ活気づきました。「日経平均がここ数日で900円超の下げを見せたから、そろそろ底入れか?」という押し目買いムードが強く、特にディスコ〈6146〉やアドバンテスト〈6857〉、レーザーテック〈6920〉といった半導体関連株が元気よく跳ね上がったのが印象的でした。これらはフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の上昇を背景にした買いであり、久々に「テクノロジー系が日本株を引っ張るぞ!」という空気感が戻ってきた格好です。
しかし、寄り付き直後の勢いは意外と長続きせず、前引けにかけては上げ幅を徐々に縮小。これは米中貿易摩擦の悪化懸念がくすぶったまま残っているうえ、今夜に予定されるパウエルFRB議長の講演や4月の米JOLTS求人件数の発表を控えた「手控えムード」が強まったためでしょう。特に銀行株(三井住友〈8316〉、三菱UFJ〈8306〉など)は冴えない動きが続き、米金利が思うように上昇しない限り短期的な買い材料に乏しい状況で、商社株(三菱商事〈8058〉、伊藤忠〈8001〉など)も含め、リスクを取る動きに慎重だったことが見て取れました。
後場に入って円相場は1ドル=143円台前半からやや円安方向に振れ、輸出関連には多少追い風となりました。とはいえ、1ドル=145円を超えるほどの円安トレンドではなく、あくまで「灯油程度の燃料投下」にとどまっていたため、トヨタ〈7203〉やソニー〈6758〉など大手輸出株に大きな物色が入るには至らず。結局、終盤のクロージングオークションで日経平均は前日比23.86円安の37,446.81円で下落着地となり、「半導体以外のエネルギー不足」が際立つ一日となりました。
もともと大きな商いではなかったものの、値上がり銘柄数は全体の34%、値下がり銘柄数が61%と、6割以上の銘柄が売られているところを見ると、終日どこかしらに「売りたい」ムードが漂っていたことがうかがえます。セクター別に見ると、電気・ガス業や医薬品、卸売業などは軟調。一方、鉱業や機械、海運業といったセクターだけが強さを保っており、INPEX〈1605〉や石油資源〈1662〉のような資源関連、三菱重工〈7011〉やIHI〈7013〉などの重工・機械株には買いが入っていました。これは米長期金利の上昇一服や円安の下支えを見越したものでしょう。
個別銘柄を振り返ると、まず半導体関連株の底堅さは際立っていました。ディスコ〈6146〉、アドバンテスト〈6857〉、レーザーテック〈6920〉は米国半導体需要の底入れ期待を背景に買われ続け、「ここが日本株で唯一安心して買えるセクターなのでは?」という声まで聞こえてくるほど。加えて、ソニー〈6758〉やソフトバンクグループ〈9984〉、NTT〈9432〉など、決算面で大きなサプライズこそないものの「安定感」を評価される大手ハイテク・通信株にも押し目買いが入っていたようです。一方、三井住友〈8316〉や三菱UFJ〈8306〉などの銀行株、伊藤忠〈8001〉や三菱商事〈8058〉など商社株は軒並み軟調。とりわけ、米金利動向が読みにくい今は「銀行株に仕掛けるタイミングではない」と判断されている雰囲気が濃厚でした。
消費関連では、松屋〈8237〉が5月の松屋銀座店売上減少を受けて売り込まれ、リクルートHD〈6098〉やフジクラ〈5803〉なども上値が重かったことから、「今のところ国内消費株に物色意欲は戻っていないな」という印象を抱かざるをえません。むしろ、伊藤園〈2593〉が今期の2ケタ営業増益・増配見通しを好感されて急騰したように、業績見通しに“はっきりとした数字”が出ている企業にしか短期的な買いは入らない、という傾向が顕著です。
為替については、本日中盤に1ドル=143円台前半からやや円安傾斜に傾いたことで、輸出株や資源株に小さなプラス要素を与えました。ただ、相場全体を押し上げるほどのインパクトはなく、あくまで「おまけ程度」の材料にとどまっています。円相場が本格的に1ドル=145円を超えてくるようであれば、もう少し市場全体に活気が戻りそうですが、現状はベア(円高)からブル(円安)にかけての一時的な揺れに過ぎず、相場の方向感を示すには弱い状況です。
振り返れば、日本株の主役はあくまで半導体関連と資源・機械セクターであり、その他のセクターは材料不足で「やや寄り付き買い→後場垂れる」というワンパターンが目立ちました。投資家心理としては、「米中貿易摩擦の先行き不透明感」「米JOLTSやFRB議長発言のリスクオフ要素」をにらみつつも、「半導体需要回復への淡い期待」でなんとか踏みとどまっている、という状況でしょう。
米国の景気指標やAI関連需要の底入れが続くようであれば半導体関連株(ディスコ、アドバンテスト、レーザーテックなど)には引き続き資金が向かいやすく、逆に米中交渉の悪化で半導体需要懸念が強まると利益確定売りが波及しやすいとみています。また、米長期金利が上昇トレンドに戻れば国内銀行株(三井住友、三菱UFJなど)に復調機運が訪れそうですし、円安が1ドル=145円台に深堀りすれば商社株(伊藤忠、三菱商事など)や輸出関連(トヨタ、ソニー、キーエンスなど)に本格的な買い戻しが入る可能性が高いでしょう。資源・海運や機械セクター(INPEX、石油資源、三菱重工、IHIなど)は海外景気や原油価格の動向に敏感で、米国PMIやユーロ圏物価統計などが好転すれば再度注目されるでしょう。
日本株全体がしっかり上を向くには、米中貿易や米金融政策の“安心感”が不可欠」というのが今の率直な実感です。半導体関連や資源・機械セクターには明るい兆しもあるものの、マクロリスクが再燃すると一斉に利益確定売りが来るリスクもあるため、むやみに全体資金を投じるのは得策ではありません。個人的には、「今のうちに半導体銘柄をじっくり押し目で拾いながら、銀行・商社が本腰を入れるタイミングを待つ」というスタンスで臨みたいと思っています。日経平均が再び38,000円台を目指すには、米国発の好材料が出そろう6月後半頃まで少し様子見ムードが継続しそうですが、その先には「夏のボラティリティ相場」が控えていると見ており、上手にトレンドをつかんでいきたいところです。