7月9日 今仕込んでおきたい注目の銘柄 |
今日の相場
本日8日の東京株式市場は、前日の米国株安を受けて一時売り先行となりましたが、トランプ前大統領による“日本への25%関税通告”報道を受けた市場の反応は想定以上に落ち着いたもので、結果的に日経平均は101円13銭高の39,688円81銭と反発で着地しました。TOPIXも4.82ポイント高の2,816.54ポイントとなり、リスク回避ムード一色とはならずに1日を終えました。
背景としては、今回の関税通告が“いわゆるTACO戦略(Take And Compromise Offer)”に基づいた交渉の一環であると市場が理解しつつある点が挙げられます。今回、日本に対して示された関税率は25%とされましたが、すでに4月段階で24%が言及されていたためインパクトは限定的。また、発効が即日ではなく8月1日までの交渉猶予が与えられていることも、市場の安心材料となりました。ある意味で「慣れ」と「織り込み」が相場を支えている構図です。
実際、日経平均は朝方に228円高まで上昇する場面も見られ、前場中ごろまでは買いが先行する流れでした。その後は戻り待ちの売りも出て上値は重かったものの、全体としては「最悪のシナリオ回避」への安堵感が下支えしました。東証プライム市場では全33業種中20業種が上昇、値上がり銘柄は全体の66.5%とポジティブな地合いでした。
業種別では、非鉄金属や精密機器、ガラス・土石製品、鉱業、海運、石油株などが買われました。フジクラや古河電工、HOYA、AGC、出光興産、ENEOSなどの上昇が目立ちます。好決算銘柄への評価も続いており、上期上振れ決算を発表したネクステージ<3186>が急騰、タダノ、オムロン、住友電工なども上昇しました。
一方で、医薬品や食料品、保険などのディフェンシブセクターは軟調。中外製薬、第一三共、アサヒ、サントリーBF、東京海上などが売られました。その他では、株式売出しによる需給懸念が重荷となった丸井グループが急落したほか、GMOインターネット、東京ガス、日産自動車なども値下がり率上位となっています。金融セクターでは三菱UFJFGや三井住友FGなどメガバンクが軟調でした。
為替は、米10年債利回りが高止まりする中で、ドル高・円安の流れが再び強まりました。ドル円は再び上昇トレンドに転じつつあり、輸出関連株への買い安心感も一部でみられています。ただし、日本が25%関税の対象とされ、今後の交渉がこじれる場合には円買い圧力が再燃する可能性もあり、為替市場も予断を許しません。
米国による日本への関税方針は大きなイベントですが、即時的な影響というよりも「交渉次第で変わる」という柔軟な側面を残しており、過度な悲観には至っていません。むしろ8月1日までの交渉フェーズに入ったことで、今後1カ月はトランプ前大統領の発言や書簡外交、BRICSの反応、そして国内の対応姿勢が相場に緩やかに影響する展開となりそうです。
米国自身も大型減税や保護主義政策のコストを抱えており、財政規律の緩みや“米国売り”が意識される場面も増えています。仮にこのまま関税強化が続けば、米国債売りやドル売りが進行し、中期的にはユーロ高・ドル安、それに対する円の動きが注目される場面もありそうです。
テクニカル的には日経平均が心理的節目である4万円手前で何度も押し返されていることから、39,500~40,000円のレンジでのこう着状態が意識されます。25日線(39,300円台)を下抜けない限りは調整色は強まりませんが、上値はETF分配金の売り圧力や決算発表待ちの様子見姿勢が重石となりそうです。
騰落レシオやRSIなど短期テクニカル指標も中立圏を示しており、トレンドレスな展開がしばらく続くとみられます。材料が少ない分、好業績銘柄や政策テーマに資金が流れやすく、個別物色の地合いは継続するでしょう。
今後は8月1日までの交渉フェーズをどう通過するかが最大の焦点です。レンジ相場継続が基本シナリオとなり、決算発表シーズンを控えて様子見姿勢が広がりそうです。